海外駐在の準備過程では、公的書類の手配や引っ越し、業務引き継ぎなど、短期間で驚くほど多くのタスクをこなさなければなりません。
「少しでも前に進めないと…」と焦って、思いついたものから手当たり次第に着手したくなる気持ち、よくわかります。
でも、ちょっと待ってください。このとき意外と大事なポイントが、準備の初期段階で「駐在準備スケジュールを作ること」なんです。
なぜなら、海外駐在準備は自分一人で完結するものではないからです。
本記事では、駐在準備スケジュールを初期段階で作ることの重要性、具体的な作成方法とその効果的な使い方について解説します。
なぜ駐在準備の初期にスケジュールを作るべきなのか
駐在準備は一大プロジェクト
海外駐在準備は、決して一人で完結する作業ではありません。会社、上司、人事、家族など、複数の関係者が関わる一大プロジェクトです。
早い段階でスケジュールを作っておくことで、次のような状態を作ることができます。
- 「いつ・何が発生するか」の全体像を自分自身が把握できる
- 周囲からの質問に即座に答えられる
- 想定外の依頼や急な変更にも冷静に対応できる
これは単なる作業効率化のためではありません。関係者との認識のずれを防ぎ、無用な混乱を避けるための重要な作業なのです。
チェックリストとは違う「スケジュール」の役割
ここまで記事を読まれたら、「準備作業のチェックリストとは何が違うの?」と思うかもしれません。しかしチェックリストとスケジュールには明確な違いがあります。
- チェックリスト:自分が漏れなく作業を進めるためのもの
- スケジュール:他者に状況を説明し、理解してもらうためのもの
目的がまったく異なるため、内容も変わってきます。
チェックリストはあくまでも自分用のため、「自分が抜け漏れなくやることを把握できる」粒度=なるべく詳細に内容を書き起こすことが重要です。
一方で、スケジュールにはそこまで細かい情報は必要ありません。このスケジュールの役割は、それを見た人が「自分は今、何を求められているのか」「どこで関われるのか」を判断できる状態を作ることです。
そのため、大きなイベントについてのみをシンプルに示せば十分です。
スケジュールがないまま準備を進めるリスク
共有用のスケジュールを作らずに海外駐在準備を進めてしまうと、思わぬところで負担が増えたり、作業がストップしてしまいがちです。
たとえば、業務の引き継ぎ時期が曖昧なまま進み、直前になって慌てて調整が必要になることがあります。
また、家族にとっては先の見通しが立たず、「それはもっと早く知りたかった」と感じさせてしまうことも少なくありません。
これらは準備が遅れているから起きるのではなく、状況を共有する材料が不足していることが原因です。
時期や大きな節目が見えないと、周囲は「今は何もできないのか」「自分が動くべきタイミングはいつなのか」を判断できません。
その結果、確認や説明が何度も発生し、本人の精神的な負担も大きくなってしまいます。
初期段階でのスケジュール作成は、このようなトラブルを事前に防いでくれます。
誰に向けてスケジュールを作るべきなのか
このスケジュールは、自分の作業を管理するためのものではありません。
それを見る人が、「自分は今、何を求められているのか」「どこで関われるのか」を判断するための資料です。
例えば上司は、業務の引き継ぎや最終的なスケジュール調整を考えるためにこれを見ます。
会社や関係部署は、社内手続きや支援が必要になる時期を把握するために確認します。
家族は、生活面の準備や判断を前もって考えるために全体の流れを知りたいと考えています。
立場は違っても、共通しているのは
「詳細な作業内容」ではなく、「いつ・何が起きるのか」という見通しが必要だという点です。
だからこそ、大きなイベントが時系列に沿って整理されたスケジュールに意味があります。
駐在準備スケジュールの作成方法
共有用スケジュールを作る際は、以下のポイントを意識しましょう。
1. 大きなマイルストーンを洗い出す
まずはスケジュールに書くイベントの洗い出しです。
ここでは、先ほども述べたように大きなイベントのみ書き、他はわかりやすさ重視で省きます。
大きなイベントというのは、主に以下の4つです。
- いつもと違うことをする(ビザ申請、住宅売却、引き継ぎなど)
- いつもと違う場所にいる(パスポート申請、予防接種、国際免許取得など)
- 最終出社日
- 渡航日
2. 各イベントの期限を明記する
どのイベントをスケジュールに入れるか決めたら、次はそれらを配置していきます。
ビザの面接日のように日程がピンポイントに決まる予定は当然その日程に配置しますが、そうでない場合は期限日に配置するとよいです。
たとえばビザ申請なら、書類提出の締め切り日に記載します。
これによって、関係者が把握すべきタイミングを具体的に示します。
3. 「どこにいるか」を明示する
意外と見落とされがちですが、自分がどこにいるのかを示すことは非常に重要です。
なぜなら、渡航準備ではビザや国際免許の取得、転出手続きなど、日常的には行わない作業が多く含まれており、そのために時間が必要なだけでなく、何をするためにどこにいるかが見えなくなってしまうからです。
中には下見渡航や事前研修などで1週間程度不在になるケースもあると思います。
駐在前の忙しい期間に会社を不在にしてしまう時間が増えますが、場所を事前に明記しておくことで、上司に不在になることの了承を得られやすくなります。
また、スケジュールを見た関係者が「不在日の前日までにこの確認をしておこう」「この期間にこちらの準備を進めておいて、戻ってきたら一緒に○○しよう」などと効率的に動くことができます。
4. シンプルに、一目でわかる形式で
どのようなフォーマットでスケジュールを作るかは完全にお好みです。綺麗に作る必要はありません。手書きでも全く問題ありませんし、慣れている方はExcelが一番早いかもしれません。
大切なのは、だれが見ても視覚的にわかりやすいことです。
5. さっと作ってさっと出す
このスケジュールは、時間をかけて作り込む必要はありません。
重要なのは完成度ではなく、早く作って早く共有することです。
海外駐在準備は、状況が変わっていくのが当たり前です。
最初から正確な日程や確定情報をそろえるのはほぼ不可能であり、タイミングを待っているとかえって共有が遅れてしまいます。
それよりも、「現時点での見通し」を示すだけでも、周囲は次に取るべき行動を判断できます。
まずは大枠だけを整理し、さっと作ってさっと出す。何か変更が生じたら、その都度更新すれば十分です。
もしそれでも不安…ということであれば、スケジュール内に最終更新日と変更点メモ欄を作り、更新の都度関係者にお知らせすれば対応としては100点でしょう。
スケジュールの効果的な使い方
上司・会社と共有する
スケジュールを作成したら、まず最初に共有すべきは上司です。上司とスケジュールを共有すると、次のような効果があります。
- 業務の引き継ぎ相談ができる
- 突発的な業務依頼を減らせる
- 手続きのための不在や休暇取得の理解が得られる
また、人事や総務などの関係部署ともスケジュールを共有するメリットがあります。
- 手続きの抜け漏れを防げる
- 「今どこまで進んでいるか」をいちいち説明する手間が減る
- イレギュラー対応が発生したときに相談しやすい
特に海外駐在では、「もうそんな時期なのか」「それはもっと早く言ってほしかった」といったすれ違いが起きやすいもの。スケジュールを可視化するだけで、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。
家族と共有する
家族帯同でも単身赴任でも、家族は心配や不安を感じやすい立場にあります。
スケジュールを共有しておくことで、次のことが明確になります。
- 何かやるべきことはあるか
- いつまでに何を決めるべきか
- いつごろが忙しく大変なのか
結果として、「何も聞けない不安」や「直前になっての混乱」を防ぐことができます。家族が状況を理解していれば、適切なタイミングでサポートをしてもらえる確率が高まりますし、精神的な負担も軽減されるでしょう。
まとめ
海外駐在準備におけるスケジュール作成は、「自分の作業管理」ではなく「他者との共有」のために行うものです。
自分自身のやることについては詳細をチェックリストで管理する一方、全体像と大きなイベントだけをまとめたスケジュールを別で作り関係者に共有する。これだけで、上司・会社・家族とのやり取りが格段にスムーズになります。
海外駐在が決まったら、まずは「何をやるか」ではなく「いつ何が起きるか」を整理することから始めましょう。その一手間が、これから始まる準備期間を大きく楽にしてくれますよ。


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