見落とし厳禁!駐在前にやるべき公的手続きチェックリスト

海外駐在の辞令が出ると、引っ越しの準備や仕事の引き継ぎに追われて、公的手続きが後回しになりがちです。

しかし、出国前に済ませておくべき手続きを怠ると、帰国後に想定外の対応が生じたり、余計な費用が必要になったりするリスクがあります。

この記事では、駐在前にやっておくべき公的手続きをまとめてご紹介します。

駐在期間を安心して過ごすために、必要な手続きを確実に押さえておきましょう。

住民票・住民税に関する手続き

転出届の提出

1年以上の海外駐在が決まったら、住民票を抜く手続きが必要です。

転出届は、出国予定日の14日前から受け付けており、住所地の市区町村役場で手続きを行います。

転出届を提出すると、住民票が除票となり、国民健康保険や国民年金の資格も自動的に喪失します。

この手続きを済ませることで、帰国までの期間は住民税の課税対象から外れるため、二重課税を避けられます。

手続きには本人確認書類と(パスポートでOK)とマイナンバーカードが必要です。

住民税の納付方法の確認

住民税は、前年の所得に対して課税されるため、以下の条件を満たす場合は出国後も納税義務が残ってしまいます。

  • 出国する年の1月1日に日本に住所がある
  • 前年の所得がある

従って、出国前に残りの住民税をどう納めるかを決めておく必要があります。

主には一括で納付する方法と、納税管理人を指定して分割で納付してもらう方法があります。

また海外駐在の場合、会社が給与天引きで対応してくれるケースもあるため、人事部門に確認しておくと安心です。

納税管理人を指定する場合は、家族や信頼できる知人に依頼し、市区町村役場に納税管理人申告書を提出します。

この手続きを怠ると、納税通知書が届かず延滞金が発生する可能性があるため注意が必要です。

マイナンバーに関する手続き

マイナンバーカードの扱い

海外転出届を提出すると、マイナンバーカードは自動的に失効します。

ただし、カード自体は返納する必要がなく、帰国後に継続利用の手続きを行えば再び使用できます。

一方、出国前にマイナンバーカードを利用した各種電子サービスを使っている場合は、必要に応じて利用停止や電子証明書の失効などの手続きを検討しましょう。

例えば、以下のようなサービスでは利用をやめる際の手続きが案内されています。

  • スマホ用電子証明書
  • マイナンバーカードの健康保険証利用
  • マイナポータル連携サービス(住所変更ワンストップサービスなど)

マイナンバー自体は海外在住中も変わらず、帰国後も同じ番号を使い続けます。

通知カードやマイナンバーが記載された書類は、海外での各種手続きで必要になる場合があるため、大切に保管しておきましょう。

海外在住時の注意点

海外在住中でも、日本国内の金融機関との取引や、日本の不動産売却に伴う税務手続きなどで、マイナンバーの提示や記載を求められる場合があります。

特に証券口座や銀行口座を保有し続ける場合、金融機関によってはマイナンバーの提供・確認が必要とされることがあります。

事前に各金融機関の海外転出時の対応を確認し、必要な手続きを済ませておくと、駐在中のやり取りがスムーズになります。

なお、国外転出に伴い住民票が消除されると、継続利用の手続きを行わなかったマイナンバーカードの電子証明書は失効し、その場合はe-Taxなど電子証明書を使うオンラインサービスは利用できません。

非居住者として日本の不動産売却などで確定申告が必要になるときは、事前に納税管理人を税務署に届け出て、納税管理人を通じて書面で申告・納税する方法が一般的です。

年金に関する手続き

国民年金の切り替え

配偶者が帯同する場合、国民年金の切り替えが必要になるケースがあります。

特に、国民年金の第1号被保険者として加入している人は注意が必要です。

海外転出に伴い住民票を抜くと、原則として国民年金の加入義務はなくなります。
ただし、多くの自治体では、転出届を提出したあとに、市区町村の国民年金担当窓口で「国民年金の資格喪失」の手続きを行う必要があります。
この手続きを行い、あわせて任意加入もしなければ、その後の国民年金保険料を納める必要はなくなります。

一方で、第3号被保険者の扱いは少し注意が必要です。
海外特例によって第3号のまま継続できるのか、それとも第1号へ切り替える必要があるのかは、配偶者の勤務先を通じて日本年金機構へ届け出る形になります。
そのため、渡航前に会社の担当部署や年金事務所へ確認しておくと、手続きで迷わずに済みます。

なお、年金手帳は帰国後も引き続き使用します。
海外赴任中も、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。

厚生年金加入者の扱い

日本の企業に雇用されたまま海外赴任する場合、多くのケースでは日本側の事業所との雇用関係が続くため、赴任先に関係なく厚生年金へ継続して加入することになります。

その際に確認しておきたいのが、赴任先の国と日本との間に社会保障協定が結ばれているかどうかです。
社会保障協定がある国では、年金制度の二重加入を避けるための手続きを行うことになっており、実務上は会社が対応するのが一般的です。

一方、社会保障協定が結ばれていない国に赴任する場合は、日本の厚生年金と赴任先の年金制度の両方で保険料を負担する可能性があります。
この点はケースによって扱いが異なるため、事前に自社の人事部門へ具体的な取扱いを確認しておくと安心です。

なお、海外赴任中も厚生年金に継続して加入していれば、その期間は日本の厚生年金の加入期間としてきちんとカウントされます。
そのため、帰国後の受給資格や加入期間の面で、大きな不利が生じる心配はありません。

任意加入の考え方

国民年金の加入義務がなくなった後も、任意で加入を続けることができます。任意加入を選択すれば、海外在住中も年金の加入期間に算入され、将来の年金受給額を増やせます。

任意加入のメリットは、老齢基礎年金の受給資格期間を満たせることと、受給額を増やせることです。

特に駐在期間が長期にわたる場合、未加入期間が長くなると将来の受給額に大きく影響します。

任意加入を希望する場合は、通常、出国前に最後の住所地を管轄する市区町村窓口や年金事務所で申出を行います。

保険料の支払いは、日本国内の金融機関口座からの口座振替や、日本にいる家族などによる納付が一般的です。

健康保険に関する手続き

国民健康保険の資格喪失

海外転出届を提出すると、国民健康保険の資格は自動的に喪失します。保険証は市区町村役場へ返却し、すでに支払った保険料のうち未経過分は還付されます。

国民健康保険の資格を失うと、日本の公的医療保険は使えなくなります。
そのため、一時帰国中に日本の医療機関を受診する場合は、原則として医療費は全額自己負担となります。

一方で、海外在住中に現地の医療機関を受診した場合は、加入している保険の内容によって、海外療養費制度などを利用し、後日一部の費用が払い戻されることがあります。

また、会社員の健康保険に家族が被扶養者として加入している場合でも、海外転出や生活の拠点が海外に移ることにより、配偶者や子どもの資格喪失や区分変更といった手続きが必要になることがあります。
具体的な扱いは健康保険組合ごとに異なるため、早めに勤務先の人事部門や健康保険組合へ確認し、必要な届出を行っておくと安心です。

会社の海外赴任者向け保険との関係

多くの企業では、海外赴任者とその家族を対象とした医療保険や傷害保険を用意していると思います。

最も重要なのは、これらの保険でカバーされる範囲と、国民健康保険や社会保険との関係を理解しておくことです。

会社が用意する保険は、現地での医療費をカバーする目的で設計されており、日本の公的医療保険とは補償内容が異なります。

歯科治療や持病の治療など、補償対象外となる医療サービスもあるため、保険証券で詳細を確認しておきましょう。

日本の健康保険組合に継続加入する形で赴任する場合もあります。この場合、駐在中も保険証が有効なため、一時帰国時に日本国内で保険診療を受けられます。

税金に関する手続き

所得税の納税管理人の選任

海外赴任中も日本国内に不動産収入や配当収入がある場合、所得税の申告義務が継続します。

納税管理人を選任しておけば、出国後も確定申告や納税をスムーズに行えます。

納税管理人は、日本国内に住所を持つ成人であれば誰でも依頼できます。

家族や税理士に依頼するのが一般的です。

選任後は、所轄の税務署へ所得税の納税管理人の届出書を提出します。

納税管理人を選任しない場合でも、自分で郵送等により申告することは可能ですが、期限までに手続きできないと延滞税などが発生するおそれがあります。

特に賃貸物件から毎年所得が発生する場合は、必ず納税管理人を選任しておきましょう。

確定申告が必要になるケース

海外赴任する年の1月1日から出国日までの所得については、日本で確定申告が必要となる場合があります。

確定申告が必要かつ年の途中で出国する場合、出国前に準確定申告を行うか、納税管理人を通じて翌年の申告期限までに申告する方法があります。

給与所得のみであれば、会社が年末調整で対応してくれるケースもあります。

ただし、医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合は、自分で確定申告を行う必要があるため、人事部門へ確認しておきましょう。

海外勤務中の給与が国内源泉所得に該当するかどうかは、勤務地や給与の支払い元によって変わります。

税理士や会社の税務担当者に相談し、申告の要否を明確にしておくと安心です。

運転免許証に関する手続き

国際運転免許証の取得

海外で自動車を運転する場合、多くの国では国際運転免許証が必要です。

国際運転免許証は、ジュネーブ条約に基づく証明書で、各都道府県の運転免許センターや警察署で即日発行されます。

有効期間は発行日から1年間で、更新はできません。

1年以上の駐在では、現地の運転免許証への切り替えも視野に入れましょう。

ただし、国際運転免許証だけでは運転できない国もあり、赴任先の国が条約に加盟しているか事前に確認が必要です。

またアメリカの場合、州ごとにルールが異なりますので注意しましょう。

例えばカリフォルニア州の場合、居住者は州の免許証取得が必須です。

日本の免許証の更新対応

駐在中に日本の運転免許証の更新時期を迎える場合、更新期間前の更新手続きが可能です。

出国前に運転免許センターで手続きを行えば、最長で有効期間を延長できます。

運転免許センターは比較的不便な場所にあることが多いので、国際運転免許証の取得とセットで手続きをするのが最も効率的です。

更新時期が出国後になる場合は、やむを得ない理由による更新として、帰国後に手続きが可能です。

ただし、帰国後1か月以内に手続きを行わないと、免許証が失効する可能性があるため注意しましょう。

更新手続きには、パスポートや航空券など海外赴任・滞在を証明する書類が必要です。

駐在期間が長期にわたる場合は、出国前に更新しておくのが最も確実です。

パスポートに関する手続き

有効期限の確認

パスポートの有効期限が駐在期間中に切れる場合、出国前に更新しておく必要があります。

多くの国では、入国時にパスポートの残存有効期間が6か月以上必要とされています。

駐在期間全体をカバーできる有効期限があっても、入国時の残存期間不足で搭乗拒否される可能性があります。

パスポートの更新は、住所地の都道府県旅券課(パスポートセンター)で行います。

申請から受領まで通常約1週間、ゴールデンウィークや夏休み前などの繁忙期はそれ以上に時間がかかるため、余裕を持って手続きを済ませるのが賢明です。

残存期間不足によるトラブル

残存有効期間の要件は国によって異なり、3か月あればOKの国もあれば1年以上を求める国もあります。

赴任先の国だけでなく、経由地や出張先の要件も確認しておくと、駐在中の移動がスムーズです。

ビザ申請時にも残存有効期間の要件があり、ビザの有効期間に合わせて一定期間以上の余裕が求められます。

ビザ取得前にパスポートを更新しておけば、こうしたトラブルを回避できます。

家族のパスポートも同時に確認し、必要に応じて更新や新規発給の手続きを行いましょう。

子どものパスポートは有効期間が5年と短いため、特に注意が必要です。

戸籍・証明書関連の準備

戸籍謄本・住民票の写し

海外でビザ申請や婚姻手続きを行う場合、戸籍謄本や住民票の写しが必要になります。

出国前に複数部取得しておくと、駐在中に日本から取り寄せる手間を省けます。

戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得します。

遠方の場合は郵送請求も可能ですが、時間がかかるため早めに手配しましょう。

住民票の写しは転出届を提出する前に取得する必要があります。

これらの書類は発行日から3か月以内のものを求められるケースが多いため、出国直前に取得するのが効率的です。

必要部数は赴任先の国や手続き内容によって異なるため、会社や大使館に確認しておきましょう。

英文証明書の取得

海外でのビザ申請や運転免許の取得、銀行口座の開設、学校への入学などの手続きでは、戸籍謄本や住民票の英文翻訳を求められることがあります。
こうした書類は、日本にいるうちに準備しておくと、渡航後の手続きがスムーズになります。

一部の市区町村役場では「戸籍英訳証明書」を発行していますが、多くの自治体では対応していません。
その場合は、翻訳会社に依頼して翻訳文を作成し、公証やアポスティーユの取得を行うのが一般的です。

英文書類の準備は、通常の証明書よりも時間がかかる傾向があります。
そのため、出国の1か月ほど前を目安に、必要書類の確認と準備を始めておくと安心です。
また、市区町村によっては英文の住民票を発行できる場合もありますが、対応状況は自治体ごとに異なるため、事前の確認が欠かせません。

現地で求められる書類は、手続きの内容や国によって大きく異なります。
不安な場合は、すでに赴任を経験している人や現地の日本人会などに相談すると、実情に合った情報を得やすくなります。

在外届の提出

在外届の概要

海外に3か月以上滞在する場合、在外届の提出が義務付けられています。

在外届を提出すると、在外公館から安全情報や選挙情報が届くようになり、緊急時の安否確認にも活用されます。

在外届に登録された情報は、災害や事件に巻き込まれた際の救援活動の基礎資料となります。パ

スポートの紛失や事故の際にも、在外公館からの支援を受けやすくなるため、必ず提出しておきましょう。

提出は任意ではなく法律で定められた義務です。

未提出による罰則はありませんが、自分と家族の安全を守るために確実に手続きを行いましょう。

提出方法とタイミング

在外届は、外務省の「オンライン在留届」システムで24時間いつでも提出できます。

出国前でも出国後でも提出可能ですが、赴任先の住所が確定してから登録する必要があるため、現地到着後に手続きを行うのが一般的です。

オンラインでの提出には、氏名、生年月日、本籍地、パスポート番号、現地住所、連絡先、同居家族の情報が必要です。

入力内容に変更があった場合は、速やかに変更届を提出しましょう。

オンライン環境がない場合は、赴任先の在外公館に直接出向いて書面で提出することもできます。

帰国時には帰国届の提出も忘れずに行いましょう。

その他見落とされやすい公的手続き

印鑑登録の扱い

転出届を提出すると、印鑑登録は自動的に抹消されます。

出国前に印鑑証明書が必要な手続きがある場合は、転出届の提出前に取得しておきましょう。

不動産売買や自動車の名義変更など、駐在中に印鑑証明書が必要になる場合があります。

こうした手続きの予定がある場合は、出国前に済ませるか、署名証明制度の利用を検討しましょう。

署名証明は在外公館で取得でき、印鑑証明書の代わりとして使用できるケースがあります。

ただし、すべての手続きで認められるわけではないため、事前に受付機関へ確認が必要です。

各種行政サービスの利用制限

その他、このような変化が起こります。

  • 住民票を抜くと、図書館カードや公共施設の利用登録など、住民を対象とした行政サービスは利用できなくなります。
  • 児童手当や子ども医療費助成などの給付も、転出届の提出により受給資格を失います。
  • 受給中の手当がある場合は、市区町村役場で資格喪失の手続きと、支給済み分の精算を行います。
  • e-Taxや各種オンライン申請を利用していた場合は、納税管理人による書面での手続きに切り替える必要があります。

ご自身で必要な処置・対応がないか、今一度確認してみてくださいね。

まとめ

海外駐在の準備は多岐にわたりますが、公的手続きは期限が決まっているものが多く、後回しにできません。

この記事で紹介した手続きを一つずつ確認し、余裕を持って準備を進めていきましょう。また不明点がある場合は、各窓口や会社の人事部門に積極的に相談することで、プロの力を借りスムーズに出国準備を完了できますよ。

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